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ローマン体の歴史を振り返ってみた

本日もカリグラフィの歴史についての記事です!

ちなみに、カリグラフィという言葉は「美しく書く」という意味を表すのはご存知でしたか?

今ではパソコンの普及により手書き文字を書く機会が少なくなってしまったかもしれませんが、その普及とともに再び、手書き文字の芸術性や個性が脚光を浴びているのは事実だと思います。

さて、今回はローマン体、別名セリフ体が誕生するまでの歴史を振り返ってみたいと思います!

セリフ(serif)とは文字のストロークの端についている「うろこ」のような装飾のことです。可読性が高いのが特徴的ですね。

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※サンセリフのサン(=Sans)は”ない”という意味。セリフがないからサンセリフ体と呼ばれています

 

ローマン体の起源「トラヤヌスの碑文」

紀元前に誕生したイタリア半島から地中海にまたがる領域国家を築いたローマ帝国。

そのローマ帝国の全盛期と言われているのが、1世紀末から2世紀後半に存在した5人の皇帝(五賢帝)が支配した時代です。

その時代で帝国の支配する領域を最大にした皇帝がトラヤヌス帝です。

トラヤヌス帝が特に目立つ功績をあげたのが、ダキア(ルーマニア)遠征。

その勝利を記念するためにモニュメントが企画され、彼の死後、ローマ市街地の中心に大きな記念碑が作られました。

それがローマン体の起源となった有名な「トラヤヌスの碑文」です。

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碑文に書かれた文字の完成度は高く、当時存在していたアルファベットの約8割がこの碑文で使われていたと言われています。

この碑文を元に作られた有名な書体に、Trajan(トラジャン)があります。

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格式高く伝統的な印象を与え、かの有名な映画タイタニックのタイトルロゴにも使用されていますね。

プレ・ローマン体

12世紀以降、ミサ典書や祈祷書、礼拝書などで用いられたブラック・レター体という書体が普及していました。

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文字幅が圧縮され、重く黒々とした表情が特徴的です。

15世紀後半まで使われていたブラック・レター体ですが、当時のニューマニスト(人文主義者)たちが宗教色の強いこの書体がキリスト教の脅威を感じさせるとして忌み嫌いました。

ちなみにヒューマニズム(人文主義)とはギリシャ・ローマの古典研究によって普遍的な教養を身につけるとともに、中世のキリスト教を中心とした社会から人間を解放し、人間性の再興をめざした精神的な運動のことです。

そして、イタリアで最初に印刷所を設立したコンラード・スウェインハイムとアーノルド・バナルツの2人によって、当時ヒューマニストが用いていた手書き文字を元に活字を作り出しました。

この書体はヒューマニストの印刷人に好んで使われるようになり、ブラック・レター体からローマン体へ移行する過渡期の書体として「プレ・ローマン体」と呼ばれています。

Venetian Roman(ヴェネチアン・ローマン)

ヒューマニストが多く集まり、印刷の需要が高まっているヴェネチアにグーデンベルク工房という印刷所を設立した人物がスピラ兄弟です。

このスピラ兄弟がプレ・ローマン体から脱皮し作り上げたのがヴェネチアン・ローマンです。

ヴェネチアン・ローマンの代表的な書体にはアメリカのブック・デザイナー、アルバート・ブルース・ロジャースが復刻したCentaur(セントール)や、Adobeのタイプデザインチームが復刻したAdobe Jenson(アドビ・ジェンソン)があげられます。

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Old Roman(オールド・ローマン)

ヴェネチアン・オールドが誕生してから20数年後、またもヴェネチアの工房で誕生した活字書体がオールド・ローマンです。イタリアを発祥として15世紀後半から18世紀にかけてフランスやオランダ、イギリスなどに広まっていきました。

代表的な書体にはGaramond(ギャラモン)やドイツのタイプデザイナー、ヘルマン・ツァップが制作したPalatino(パラティーノ)などがあります。

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Garamondの歴史について知りたい方はこちらをご覧ください!

Transitional Roman(トランジショナル・ローマン)

トランジショナル・ローマン体はオールド・ローマン体からモダン・ローマン体出現までの過渡期(トランジショナル)の書体になります。

イギリスで誕生し、代表的な書体にはジョン・バスカヴィルによって作られたBeskerVile(バスカヴィル)があります。

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伝統的で気品な印象を与える書体として知られています。

Modern Roman(モダン・ローマン)

18世紀後半、トランジショナル・ローマンが現れた後すぐにイタリアとフランスで誕生したのがモダン・ローマンです。

モダンローマンが生まれた背景には産業革命後、印刷機の機能も工場し、シャープで繊細な印刷が可能になったことが挙げられます。

オールド・ローマン以前の手書きによる滑らかな印象とは対照的に機械的な直線のラインとストロークの太さの強弱が特徴的です。

代表的な書体にはフランス人のフェルミン・ディドによってつくられたDidot(ディド)やイタリアのジャンバティスタ・ボドニによってつくられたBodoni(ボドニ)があります。

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多くのラグジュアリー雑誌や有名ブランドで使用されているように、どちらも繊細で上品な印象を持っていますね。

まとめ

フォントのルーツを辿ると、文字そのものの変化や国から国への広がり方、当時の文化的背景などが知れてとても面白いですよね!

これからも様々な書体の歴史を記事で紹介できればと思っています!

多摩美術大学の李 敏思教授による「カリグラフィの発達と書体の変化に関する考察」はとても面白いので、興味のある方はぜひ読んでみてください。

 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssd/58/0/58_0_94/_pdf

今日はここまで

バイバーイ